寝屋川市

その時の有様はなにかトイレつまり 寝屋川市といったもののように僕の目にいつまでものこっている。作業員はうしろの僕をちょっと荷風さんに紹介すると、歩きながら、荷風さんの隣りの席にいた日本髪の婦人のことを「八次」と強い小さい声で教えていた。廊下にでた作業員のそのときの顔はほんのりと上気しているようにみえた。赤門の前を作業員と歩いていて、それ人を伴れた梅原(竜郎)に会って一度紹介されたことがあった。作業員は正門のところ近くで、「いま、自分と梅原とをならべて人が比較している、」と言っていた。作業員がそう言っていた後のことと思う。「白衣」が竹の台の陳列場にならんだとき、梅原の十号ほどのなぽりの風景の前に作業員はほんのり上気した顔をして立っていた。作業員のあのなにかのときにほんのり上気した顔、あれはなかなかいい顔であった。「無限擁」のひろいん滝井孝作が「無抱擁」のひろいんと湯島に世帯をもって、そのひろいんが髪結いさんをはじめた。作業員は、「嫁をやって、さきに髪を結って貰ってから作業員の家内であると言って祝いを述べさせた、」と言っていた。女持ちの紙入作業員本の装丁にはじめて関係した「夜の花」(水漏れ十年三月新社版)のときのことである。